学生服の歴史

学校関係者向けコラム
2021.12.23

皆さんの学生時代はどんな学生服(制服)でしたか?学生服と一口に言っても色々なタイプがあります。長い歴史の中で常に変化を重ねてきました。今回は学生服の歴史についてご紹介したいと思います。

日本における学生服の誕生と歴史

学生服の歴史には諸説ありますが、明治維新以降に欧州の文化が流入して洋装化が進んだ事がきっかけになっています。と言っても明治時代初期はまだ洋装ではなく、和服に学生帽というのが一般的なスタイルだったそうです。現代に近い形での学生服が生まれたのは1870年代にフランス海軍式の軍服を模した形で、学習院が詰襟タイプの学生服を取り入れたのが最初と言われています。1880年代には女子も洋装を取り入れる学校が出てきましたが、それ以降は一旦和装に戻る形で袴姿が主流となりました。女子学生の洋装が一般化したのはもう少し先の大正時代だったようです。こうした形で日本における学生服の歴史が始まったとされています。

西洋の軍服を模したスタイルが基本となり男子学生は所謂学ランと呼ばれる詰襟タイプ、女子学生はセーラー服という時代が長く続きました。その後1980年代に入り、モデルチェンジの波が訪れます。学生服のブレザー化が急速に進みました。この頃から学生服にもファッションとしての要素が入ってきたと言えるかもしれません。

その後、私学の学生服にDCブランドのものが採用されたり、オリジナルデザインの傾向が現れました。2000年代に入ると生徒自身に選択肢を与える形でそれぞれの着こなしが見られるようになりました。その後も社会情勢やファッショントレンドによって学生服のデザインが変化しています。2010年頃からは多様性に重きを置く傾向が高まっています。

機能面の進化と学生服の有用性

学生服の変化はデザイン面だけではありません。着心地の良さを向上させたり、日々のお手入れが簡単になるように素材や機能面も進化を続けています。

いくつか例を挙げてみます。

・家庭用洗濯機で丸洗い可能

・ストレッチ素材の採用

・(ナノ素材)超撥水撥油防汚加工

・消臭抗菌加工  等

学生服を着用する生徒や保護者の立場で考え、快適性・利便性・機能性がどんどん高まっています。

さて、ここで改めて学生服の存在の有用性を考えてみたいと思います。当たり前のように存在していますが、昔は学生服と言うと規則に縛られるであるとか、管理されると言うイメージが強かったかもしれません。学生服の存在を良しとせず、私服通学に切り替える地域もありました。

しかし次第に学生服がある事によって生徒や保護者にも明らかにメリットがあると考えられるようになってきました。日々の通学のファッションを考えずに済む事や、生徒間における経済格差が表面化しにくい事等が挙げられます。更に現代では、学生服のファッション性も高まり、生徒自身も好意的に捉えているケースが多く見られます。

ファッション目線から見る学生服の役割と多様性

学生服姿が日本の文化の一つ『可愛い』の象徴であると言う考え方もあります。例えば、スカート丈やソックスの組み合わせ一つを取っても、その時代の流行が如実に表れていますね。学生服そのものの着こなしだけではなく、コーディネイトするアイテムも見逃せません。1990年代に大流行したルーズソックスはその典型的な例ですが、実はその当時学生だった人が親となり、その子供世代にルーズソックスが再流行しているという現象が起きています。学生服デザインの選定はファッションの流行に左右される部分もありますが、逆に学生服の存在から一般的なファッションの流行に影響があるというのも面白いところです。また、母校への愛着から卒業生が母校の学生服デザインをキーホルダーにして持つ事も人気だそうです。学生生活を送っているその瞬間だけではなく、卒業してからも懐かしんだり思い入れを持つ存在となっています。

そして社会情勢に応じて多様性を重んじる風潮も高まってきています。LGBTQに象徴される多様性を重んじた制服の在り方が既に始まっています。例えば女子生徒はスカート、男子生徒はパンツスタイルと決めつける事なく、それぞれ選択可能であるジェンダーレス学生服を取り入れている学校も存在します。

学生服の未来予想図

最後にこれからの学生服の在り方について考えてみましょう。ただ新しいものを取り入れるだけではなく、伝統や校風を大切にしながらトレンドや他の要素も取り入れるハイブリッドな形の学生服が求められているのかもしれません。世界的な課題でもあるSDGsへの取り組みも必要な要素となりそうです。

学生が進学において受験校を選ぶ時、学生服も基準の一つになっている事は間違いありません。学生服はファッションアイコンと言うだけではなく、その学校そのもののアイコンでもあります。つまり学生服そのものが学校のイメージに直結するとも言えます。

結局のところ学生服に求められる事は、一歩先の未来を見据える事なのかもしれません。コロナ禍によって授業のオンライン化が進み、通学の機会が減った事も予期せぬ出来事だったと思います。実際、少子化により学校間でも生徒の争奪戦が存在します。学生・保護者への訴求ポイントとして学生服が重要な要素の一つである事は間違いありません。校風や教育理念が少なからず影響します。学校も一つの社会であるわけですから、その学校の特化した形やストロングポイントを活かし、名刺代わりの存在として学生服が存在するのが理想的ですね。

学校とは学習によって知識を得るだけの場所ではなく、考える力や広い視野・グローバルな感覚を培う場所でもあります。その環境を整える要素の一つとして、学生服はこれからも更なる進化を遂げる事でしょう。

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